ラトラパンテとは?仕組みと語源、代表モデルまで

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ラトラパンテのスプリットセコンド機構を表す、2本の秒針が重なるクロノグラフ文字盤のマクロ写真
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時計店のショーケースで「ラトラパンテ」という文字を見かけたものの、意味がつかめず素通りした経験はないでしょうか。フライバックやモノプッシャーなど似た響きの用語も多く、調べるほど混乱してしまうという声もよく聞きます。

ラトラパンテとは、クロノグラフの秒針にもう1本の針を重ね、2つの出来事を同時に計測できるようにした機構、いわゆるスプリットセコンド・クロノグラフのことです。フランス語で「追いつく」を意味するrattraperに由来し、クロノグラフの中でも組み立てと調整の難度がひときわ高い複雑機構として知られています。

この記事では、時計愛好家momomoが「4つの柱」の視点から、ラトラパンテの語源と仕組み、フライバックとの違い、発明の歴史、そしてパテック フィリップからハブロー2までの代表モデルと価格帯を順を追って解説します。

この記事を読むと分かること
  • ラトラパンテの定義と語源、ドッペルクロノグラフ・追針との呼称の関係
  • クランプ・ハートカム・アイソレーターが生み出す機構の仕組み
  • フライバックやモノプッシャーとの違いを一目で理解できる比較
  • パテック フィリップからハブロー2までの代表モデルと価格帯の考え方

目次

ラトラパンテとは?語源・仕組み・スプリットセコンドの基本

クランプとハートカムが組み合わさったラトラパンテ機構内部のマクロ写真
クランプが針を止め、ハートカムが針を追いつかせる二段階の動作が機構の核心です

ラトラパンテとは何か(定義)

クロノグラフの秒針が2本重なるラトラパンテ機構の瞬間を捉えたマクロ写真
プッシャーを押すと片方の針だけがその場で止まり、経過時間を読み取れます

ラトラパンテとは、クロノグラフの秒針の下にもう1本の針を重ねて持ち、2つの出来事を同時に計測できるようにした機構、すなわちスプリットセコンド・クロノグラフのことです。

通常のクロノグラフが備える1本の秒針(クロノグラフ秒針)に加えて、「ラトラパンテ針(追針)」と呼ばれるもう1本の針が同じ軸線上に重なって配置されているのが最大の特徴です(出典:Chrono24マガジン、KOMEHYOトケイ通信)。

ふだんは2本の針が完全に重なった状態で連動して動いているため、見た目には普通のクロノグラフと区別がつきません。ところがラトラパンテ用のプッシャーを押すと、追針だけがその場でぴたりと止まり、経過時間を読み取ることができます。もう一度プッシャーを押すと、止まっていた追針が瞬時に動いている針の位置まで追いつき、また重なった状態に戻ります。

この「追いつく」動作こそが、次の項で説明する語源そのものにつながっています。腕時計歴が浅いうちは「なんとなくすごい機能」という漠然とした印象だけで終わってしまいがちですが、仕組みを分解して理解すると、クロノグラフというジャンルの奥深さが一段と見えてきます。

時計店のショーケース越しに眺めているだけでは、この2本目の針の存在に気づかないことも珍しくありません。まずは「秒針がもう1本隠れている」という事実そのものを押さえておくと、この先の仕組みの説明もぐっと理解しやすくなります。

MOMOMO

ラトラパンテの本質は、1本の軸に2本の秒針を仕込み、片方だけを一時的に止められるようにした点にあります。まずはこの定義をしっかり押さえておきましょう。

EMIRI

見た目は普通のクロノグラフと同じなのに、そんな仕掛けが隠れているんですね。普通のクロノグラフとは何が違うんですか?

MOMOMO

一番の違いは、2つの出来事を同時に計測できるかどうかです。まずは言葉の整理から見ていきましょう。

語源とドッペルクロノグラフ・追針との呼称整理(独自価値)

「ラトラパンテ(rattrapante)」は、フランス語の動詞rattraper(追いつく)に由来する言葉です。プッシャー操作で一時停止した追針が、再び動いている針に「追いつく」動作をそのまま名称にした、機構の本質を的確に表す呼び方だと言えます。

一方でドイツ語圏のメーカーでは、同じ機構を指して「ドッペルクロノグラフ(Doppelchronograph)」という呼称が使われることがあります。ドッペル(Doppel)は「2つの、二重の」を意味する語で、2本の秒針を持つという構造そのものに着目した名付け方です。

国内の時計専門メディアでは「スプリットセコンド(クロノグラフ)」という英語表現もよく使われ、さらに日本語で単に「追針」と呼ばれることもあります。整理すると、ラトラパンテ・スプリットセコンド・ドッペルクロノグラフ・追針という4つの呼び方は、いずれも同一の機構を指す呼称として使われているのが実情です。

ただし、どの呼称がどの文脈でより一般的かはブランドやメディアによって差があり、厳密な使い分けのルールが確立しているわけではありません。読者としては「呼び方が違っても中身は同じ機構」という前提を持っておけば、他の記事やブランド公式サイトで別の呼称に出会っても混乱せずに済みます。

MOMOMO

呼び方の違いに戸惑う人は少なくありませんが、指している中身はすべて同じです。この後は、具体的にどんな部品がどう動いているのかを見ていきましょう。

仕組み・機構原理を分解する(クランプ・ハートカム・アイソレーター)

クランプ・ハートカム・アイソレーターなどラトラパンテの構成部品を並べたマクロ写真
クランプ・ハートカム・アイソレーターという部品の連携が機構の精度を左右します

ラトラパンテの動作は、大きく「止める」動作と「戻す」動作の2段階で成り立っています。KOMEHYOトケイ通信の解説記事によれば、プッシャーを押すと「クランプ」と呼ばれる部品がスプリット秒車を両側から挟み込み、片方の針だけを物理的に停止させます。

もう片方の針は通常のクロノグラフ秒車としてそのまま計測を続けるため、止めた瞬間の経過時間だけを読み取ることができます。再度プッシャーを押すと、「ハートカム」と呼ばれるハート形の部品と「ハンマー」と呼ばれるレバーが連動し、止まっていた針を一気に動いている針の位置まで引き戻します。この戻す動作の精度こそが、ラトラパンテの品質を左右する部分です。

さらに多くのラトラパンテには「アイソレーター」と呼ばれる部品が組み込まれています。これは針を停止させている間、クロノグラフ車とスプリット車を切り離す役割を持ち、搭載するとブレーキ時の抵抗が減ってテンプの振り角落ちを抑えられます。ただしその分ムーブメントの厚みが増すというトレードオフがあり、薄型化と精度維持のどちらを優先するかは、メーカーごとの設計思想が表れる部分でもあります。

MOMOMO

クランプ・ハートカム・アイソレーターという3つの部品の役割を分けて考えると、ラトラパンテという機構がぐっと理解しやすくなります。

EMIRI

部品が増えるということは、その分厚みも増えてしまうということですよね。

MOMOMO

その通りです。振り角落ちを抑えるアイソレーターを積めば精度は安定しますが、ケースの厚みとのバランスをどう取るかが、各メーカーの腕の見せどころになっています。

通常のクロノグラフとの違い

陸上競技で2人の走者を同時に見比べる場面とクロノグラフ腕時計を組み合わせた写真
先着した選手のタイムを止めつつ、もう一方の計測を続けられるのがラトラパンテの価値です

通常のクロノグラフは、1本の秒針だけで経過時間を計測する仕組みです。そのため計測できるのは、同時に進行している出来事のうち1つだけに限られます。

クロノグラフは意味がないのかを検証した記事でも触れているとおり、日常生活でクロノグラフのストップウォッチ機能そのものを厳密に使う場面は限られますが、この「1事象しか計測できない」という制約は、複数の対象を比較したい場面では明確な弱点になります。

たとえば陸上競技で同時にスタートした2人のランナーがいて、1人が先にゴールし、もう1人がまだ走り続けている状況を想像してみてください。通常のクロノグラフでは、先にゴールした選手のタイムを記録した瞬間に計測全体が止まってしまい、後続の選手のタイムを別途測り直す必要があります。

ラトラパンテなら、先にゴールした選手のタイムだけを追針で一時停止して読み取りつつ、もう一方の秒針は動き続けて後続選手の計測を継続できます。webChronosの解説記事によれば、この機構を追加するためにブライトリングのB03キャリバーでは28点もの部品が増えているとされ、組み立てと調整の難度が飛躍的に高まることが分かります。

EMIRI

具体的にどう便利になるのか、まだ少しイメージが湧きません。

MOMOMO

ラップタイムのように「途中経過を読み取りながら、全体の計測は止めない」という使い方ができる点が最大の価値です。競技の場面に限らず、2つの予定を同時に見比べたいときにも応用できる考え方です。

フライバックとの違い(早見比較表)

ラトラパンテとよく混同される機構に「フライバック」があります。フライバックは、計測中の秒針をリセットしてそのまま再スタートできる機能で、1回のプッシャー操作で「停止・ゼロ戻し・再スタート」を同時に行える点が特徴です。

一方のラトラパンテは、2本の秒針で異なる2つの経過時間を並行して記録できる機構であり、目的も内部構造もフライバックとは異なります。さらに「モノプッシャー」という呼び方もありますが、これはスタート・ストップ・リセットの3操作を1つのボタンだけで行うクロノグラフの操作方式を指す言葉で、ラトラパンテやフライバックとは別の分類軸にある概念です。この3つを一度に比較できる早見表を用意しました。

機構主な機能操作方法向いている用途
ラトラパンテ2本の秒針で2つの経過時間を同時計測追針用プッシャーで一時停止→再度押して追いつかせる途中経過を比較したい場面
フライバック計測中の秒針をリセットして即再スタート1回の操作でゼロ戻しと再計測を同時に実行連続する複数の計測を素早く繰り返したい場面
モノプッシャースタート・ストップ・リセットを1ボタンで操作単一のプッシャーを順に押す操作をシンプルにまとめたい場面
MOMOMO

フライバックは「素早く測り直す」機構、ラトラパンテは「2つを同時に測り続ける」機構と覚えておくと、混同しにくくなります。

歴史・発明の起源(諸説併記)

ラトラパンテの起源については、複数の説が併存しています。NAWCC(全米時計収集家協会)の資料によれば、時計師アドルフ・ニコル(Adolphe Nicole)は1844年にゼロリセット用のハートカム機構の特許を取得し、1862年にはスタート・ストップ・リセットの3機能を備えたクロノグラフの改良特許を取得しました。

このハートカム機構は、現在のラトラパンテにも通じる基礎技術のひとつとされています。一方で、「追いつく」という機構そのものの発明者としてジョゼフ・ヴィネル(Joseph Winnerl)の名を挙げる説もあり、1870年代にこの機構が組み合わされたと紹介されることがあります。

どちらの説がより正確かについては一次資料での照合が及んでおらず、現時点では断定を避けて併記するのが誠実な扱い方です。長らくこの機構はサイズの制約から懐中時計でしか実現できず、腕時計サイズへの実装には長い年月を要しました。

パテック フィリップは1839年の創業以来クロノグラフの歴史に深く関わってきたメゾンで、腕時計サイズで初めてスプリットセコンドを実現したメーカーのひとつとされています。この経緯については、次の項でさらに詳しく見ていきます。

MOMOMO

発明者については諸説あり、私たちも断定は避けます。ただ、19世紀のうちに基礎となる機構がすでに存在していたという事実は、ラトラパンテの歴史の厚みを感じさせます。

なぜクロノグラフの中で最高難度とされるのか

ラトラパンテが「クロノグラフの中でも最高難度」と位置づけられる背景には、長らく懐中時計でしか実現できなかったという技術的制約があります。

腕時計というごく限られたスペースの中に、通常のクロノグラフ機構に加えてクランプ・ハートカム・ハンマー・アイソレーターといった追加パーツを組み込む必要があり、部品点数の増加はそのまま組み立てと調整の難度上昇に直結します。

パテック フィリップが手がけた最初期の腕時計用ラトラパンテは、No.124,824という型番でパテック フィリップ・ミュージアムに収蔵されているとされ、開発着手から完成までに20年近い年月を要したという説もあります。

ただしこの型番や年代の詳細については、パテック フィリップ公式・ミュージアムの発表による一次情報での照合が望ましく、本記事では参考情報として扱います。現行モデルでは、たとえば5370Pのように「水平クラッチ(キャリングアーム)」という独自方式を採用する例もあり、100年近くの時を経てもなお各メーカーが独自のアプローチを追求し続けているジャンルであることがうかがえます。この技術的な奥行きの深さこそが、ラトラパンテを「時計師の腕が最も試される複雑機構のひとつ」と言わしめる理由です。次の章では、この技術を実際に搭載した代表モデルと価格帯を見ていきます。

トゥールビヨンの歴史的価値を解説した記事でも触れているとおり、複雑機構が「なぜすごいのか」を技術的背景から理解すると、価格の意味合いも見えやすくなります。

MOMOMO

懐中時計から腕時計へという小型化の壁を越えるまでに、長い年月がかかったという点が象徴的です。ここからは、実際にこの技術を宿した代表モデルを見ていきましょう。

ラトラパンテの代表モデルと価格帯・選び方

伝統から入門帯まで4本のラトラパンテを価格帯順に並べたフラットレイ写真
伝統の頂点から独立時計師のエントリー帯まで、価格帯の幅広さがラトラパンテの世界です

価格帯で見るラトラパンテの世界(早見)

ここからは、ラトラパンテを搭載する代表的なモデルを4本紹介します。並べ方は価格の安い順ではなく、「伝統の頂点→技術の極北→現実的な入口→独立時計師のエントリー帯」という物語の順です。

まずパテック フィリップ5370Pで、100年近い歴史を背負う伝統と最高峰の到達点を確認します。続いてA.ランゲ&ゾーネのダブルスプリット・トリプルスプリットで、技術的にどこまで突き詰められるのかを見ます。

次にブライトリング ナビタイマーB03 クロノグラフ ラトラパンテ45で、ラトラパンテとしては現実的に検討できる価格帯の入口を確認します。

最後にオーストリアの独立時計師によるハブロー2で、比較的手が届きやすいエントリー帯の存在を紹介します。この4モデルを見渡すだけでも、ラトラパンテの世界がいかに広い価格帯にまたがっているかが分かります。

モデル特徴(一言)価格帯目安(2026年8月時点)
パテック フィリップ 5370P水平クラッチ方式・伝統の最高峰二次流通で$180,000〜$250,000程度(新品定価は非公開)
A.ランゲ&ゾーネ トリプルスプリット世界唯一12時間まで比較計測可能・限定100本二次流通で$160,000〜$220,000程度
ブライトリング ナビタイマーB03 ラトラパンテ45自動巻き・比較的現実的な価格帯約105万〜156万円(税込、モデル・エディションにより変動)
ハブロー2 Doppelシリーズ独立時計師によるエントリー帯目安8,250ユーロ前後(要現行価格再確認)
価格・相場情報の取扱について

本記事の価格・相場は執筆時点(2026年8月時点)の参考値です。為替・市況により変動するため、購入・売却の判断は最新情報をご確認のうえ行ってください。
検証日:2026年8月

MOMOMO

価格帯の幅広さそのものが、ラトラパンテという機構の奥行きを物語っています。1本ずつ、その物語を見ていきましょう。

パテック フィリップ 5370P(伝統と最高峰の到達点)

プラチナケースの伝統的なラトラパンテ腕時計を三方向から捉えた製品写真
水平クラッチ方式を採用した伝統と最高峰の到達点を表現した1本です

パテック フィリップ5370Pは、手巻きキャリバーCal.CHR 29-535 PSを搭載し、プラチナケース・41mmというサイズで展開されるラトラパンテです。クラッチ方式には「水平クラッチ(キャリングアーム)」と呼ばれる独自の機構が採用されており、これはwebChronosの解説記事でも紹介されている、パテック フィリップならではの設計思想です。

新品の正規価格は非公開とされており、購入を検討する場合は正規販売店への直接の問い合わせが必要になります。二次流通市場では、$180,000〜$250,000程度の価格帯で取引される例が確認できるほか、限定ダイヤル仕様の個体では$297,530という例も見られます(出典:WatchCharts、jaztime、いずれも変動する参考値)。

パテック フィリップは1839年の創業以来クロノグラフの歴史を牽引してきたメゾンであり、5370Pはその伝統の延長線上に位置づけられる、現行ラトラパンテの最高峰のひとつと言えます。百万円台のブライトリングとは一桁近く異なる価格帯であることからも、ラトラパンテという機構の中でどれだけ幅広いレンジが存在するかが分かります。

MOMOMO

5370Pは、機構だけでなく「メゾンの遺産」という視点でも語るべき1本です。100年近い歴史を背負った到達点だと考えています。

EMIRI

そこまでの価格差になるほどの技術ということなんですね。

A.ランゲ&ゾーネ ダブルスプリット/トリプルスプリット(技術的極北)

世界唯一12時間比較計測が可能とされるトリプルスプリット型ラトラパンテの製品写真
秒だけでなく時間の単位まで比較計測できる技術的極北を象徴する1本です

A.ランゲ&ゾーネは、ラトラパンテの技術的な到達点をさらに押し広げたメゾンです。同社が手がけた「ダブルスプリット」は世界初のダブルラトラパンテ機構とされ、通常のラトラパンテが秒の比較計測にとどまるのに対し、30分計までを比較計測できる点が特徴です。

現行ラインナップに含まれているかどうかは生産終了の可能性も指摘されており、要再確認の情報として扱う必要があります。さらに同社の「トリプルスプリット」は、世界で唯一12時間まで比較計測が可能なラトラパンテとされ、限定100本という希少性を備えています。

The Watch Pagesの紹介記事によれば、二次流通では$160,000〜$220,000程度の価格帯で取引される例が見られます。秒だけでなく分・時間の単位まで比較計測できるという発想は、通常のクロノグラフからは想像しにくい領域であり、「技術の極北」と呼ぶにふさわしい存在です。

パテック フィリップが伝統を体現するなら、ランゲ&ゾーネは技術的な限界への挑戦を体現していると言えます。「世界初」「世界唯一」という言葉を冠する複雑機構を相次いで送り出してきたこと自体が、このメゾンが技術力の証明にどれだけ重きを置いているかを物語っています。パテック フィリップの5370Pと並べて眺めると、同じラトラパンテという枠組みの中でも、メゾンごとにまったく異なる哲学でアプローチしていることが見えてきます。

MOMOMO

12時間まで比較計測できるという発想自体が、ラトラパンテという機構の可能性をさらに広げています。技術者の探求心を感じる1本です。

ブライトリング ナビタイマー B03 クロノグラフ ラトラパンテ45(手が届く入り口)

黒文字盤にオレンジ差し色のパイロットクロノグラフ型ラトラパンテの製品写真
自動巻きで比較的現実的な価格帯に位置づけられる、手が届く入口の1本です

ブライトリング ナビタイマーB03 クロノグラフ ラトラパンテ45は、自動巻きキャリバーCal.B03を搭載し、文字盤側にスプリット機構を配置することでホゾの偏心を防ぐ設計が採用されているモデルです。価格帯は約105万〜156万円(税込、モデル・エディションにより変動)とされ、本記事で紹介する4モデルの中では最も現実的に検討できる価格帯に位置づけられます。

ただし日本国内の正規価格は、海外の目安価格($27,480程度)とは為替・関税等の条件により異なる可能性があるため、購入を検討する際は国内正規販売店での確認をおすすめします。筆者momomoが所有するナビタイマーB01 Chronograph 41は、ラトラパンテではなく通常のクロノグラフですが、同じナビタイマーというライン、かつ近縁のキャリバー思想を持つB03系との接点があります。

B01で日常的に感じているのは、プッシャーの押し心地がしっかりしていて誤操作しにくいこと、そしてパイロットウォッチらしい視認性の高さです。この操作感を起点に考えると、ラトラパンテ用のプッシャーを2度押して針を追いつかせる操作も、ナビタイマーというライン全体に共通する「しっかりした所作」の延長線上にあるだろうとイメージできます。

なお、これはあくまで通常クロノグラフであるB01の所有体験からの類推であり、ラトラパンテ版B03を所有・使用した体験ではありません。ブライトリング ナビタイマーの資産価値を検証した記事もあわせて参考にすると、ブランド全体の位置づけがより立体的に見えてきます。

EMIRI

このクラスなら、現実的に検討できそうな価格帯ですね。

MOMOMO

そうですね。伝統や技術の極北を知ったうえでこの価格帯を見ると、ラトラパンテという機構への入口として十分に魅力的だと感じます。

価格・相場情報の取扱について

本記事の価格・相場は執筆時点(2026年8月時点)の参考値です。為替・市況により変動するため、購入・売却の判断は最新情報をご確認のうえ行ってください。
検証日:2026年8月

ラトラパンテという機構そのものに興味を持ったら、まずは手が届く価格帯のモデルから検討してみるのも近道です。

ブライトリング ナビタイマーをチェックする

※検索結果ページに移動します。在庫・価格は変動します

ハブロー2 Doppelシリーズ(独立時計師によるエントリー帯)

独立時計師によるシンプルな2レジスター文字盤のラトラパンテ製品写真
効率的な設計によって手の届きやすい価格帯を実現した独立時計師の1本です

オーストリアの独立時計師リヒャルト・ハブリングが手がけるハブロー2(Habring2)は、ラトラパンテとしては比較的エントリー価格帯として知られるブランドです。同社のDoppelシリーズは、大手メゾンが数百万円〜数千万円台の価格帯でラトラパンテを展開する中、独立時計師ならではの効率的な設計とスケールによって、より手の届きやすい価格帯を実現しているとされています。

Doppel-Felix等のモデルは目安として8,250ユーロ前後という参考値が知られていますが、現行価格については要再確認の情報として扱う必要があります。また、日本国内での取扱いが正規代理店経由なのか並行輸入経由なのかについても、本記事執筆時点では確認が及んでいません。購入を検討する場合は、現行の価格・取扱状況を正規の窓口や信頼できる販売店に直接確認することをおすすめします。

大手メゾンによる伝統や技術の粋を尽くしたラトラパンテと並べて見ると、独立時計師によるDoppelシリーズは「複雑機構の民主化」とも言える存在です。数百万円台からしか検討できないと思われがちなラトラパンテの世界に、もうひとつの入口があることを知っておくと、選択肢の幅がぐっと広がります。

MOMOMO

独立時計師によるラトラパンテという文脈は、大手メゾンとはまた違った魅力があります。効率的な設計思想そのものが、ひとつの技術的な物語だと感じます。

実用性・壊れやすさへの懸念に答える

ラトラパンテには「複雑機構だから壊れやすいのではないか」という懸念の声が一定数あります。webChronosが「安心して使える」スプリットセコンドクロノグラフを紹介する記事をわざわざ出していること自体が、業界内にそうした不安の声が実在することの裏付けとも言えます。この懸念に対して、各メーカーは技術的なアプローチで応えています。たとえばF.P.ジュルヌのキャリバー1518は、スイングピニオンという機構を採用することで厚さ6.8mmという薄型化を実現しています。またパルミジャーニ・フルリエの一部モデルは、36,000振動/時という高ビート化によって、振り角落ちを抑えるアイソレーター自体を省略する設計を採用しています。いずれも、複雑機構ゆえの弱点になりやすい部分を、設計の工夫によって克服しようとする試みです。クロノグラフの秒針が動かしっぱなしでも壊れないかを機構別に解説した記事でも触れているとおり、機械式時計は「動いているから壊れる」という単純な話ではなく、設計思想と使い方次第で耐久性は大きく変わります。ラトラパンテも例外ではなく、正しい知識を持って向き合えば、過度に神経質になる必要はない機構だと言えます。

EMIRI

複雑な機構だと、やっぱり壊れやすいイメージがあります。

MOMOMO

気持ちは分かりますが、薄型化や高ビート化といった技術的な工夫によって、耐久性を高める方向にも進化してきた機構です。仕組みを知ったうえで扱えば、過度に恐れる必要はありません。

よくある質問(FAQ)

ラトラパンテとフライバックの違いは?

ラトラパンテは2本の秒針で異なる2つの経過時間を同時に計測できる機構です。フライバックは計測中の秒針を1回の操作でリセットしてすぐに再スタートできる機能で、目的も構造も異なります。

ラトラパンテはなぜ高価・複雑機構とされるのか?

クランプ・ハートカム・アイソレーターといった追加パーツが必要になり、部品点数が大きく増えるためです。組み立てと調整の難度が非常に高く、対応できる時計師や工房も限られています。

ラトラパンテの語源・読み方は?

フランス語の動詞rattraper(追いつく)に由来します。プッシャー操作で一時停止した針が、再び動いている針に追いつく動作を、そのまま名称にしたものです。

ラトラパンテ搭載の代表的なブランド・モデルは?

パテック フィリップ5370P、A.ランゲ&ゾーネのダブルスプリット・トリプルスプリット、ブライトリング ナビタイマーB03、独立時計師ハブロー2のDoppelシリーズなどが代表例として挙げられます。

ラトラパンテは日常使いできる?

F.P.ジュルヌの薄型化やパルミジャーニ・フルリエの高ビート化のように、耐久性を高める設計上の工夫が進んでいます。取扱いに一定の注意は必要ですが、過度に神経質になる必要はありません。

まとめ

ラトラパンテの語源と仕組み、フライバックとの違い、発明の歴史、そして価格帯の異なる4つの代表モデルまでを見てきました。「なんとなくすごい機能」という漠然とした印象だった読者も、クランプとハートカムが織りなす「追いつく」動作の仕組みを知ることで、この機構の奥深さを具体的にイメージできるようになったはずです。

MOMOMO

機構の解体・匠の美学・メゾンの遺産・生涯の伴侶という「4つの柱」で振り返ると、ラトラパンテは技術・美学・歴史・所有体験のすべてが凝縮された複雑機構だと感じます。パテック フィリップの伝統からハブロー2の民主化まで、価格帯の幅広さもまた、この機構の懐の深さを物語っています。

  • ラトラパンテはスプリットセコンド・クロノグラフの仏語名称
  • 独語圏ではドッペルクロノグラフとも呼ばれる同一機構
  • クランプとハートカムで2本目の針を止めて追いつかせる
  • アイソレーターは振り角落ちを抑えるが厚みが増す
  • 通常クロノグラフは1事象のみ同時計測は不可
  • フライバックは1回操作でリセットと再計測を行う機構
  • ラトラパンテは2つの計測を並走させられる点が違う
  • 発明者はNicole説とWinnerl説が併存し断定できない
  • 腕時計サイズでの実現は技術的難度が非常に高かった
  • パテック フィリップ5370Pは水平クラッチ方式を採用
  • ランゲ&ゾーネはダブル・トリプルスプリットで技術を極める
  • ブライトリングB03は比較的現実的な価格帯の入口モデル
  • ハブロー2は独立時計師によるエントリー帯として知られる
  • 薄型化や高ビート化で壊れにくさを追求するモデルもある
  • 価格帯は百万円台から数千万円台まで幅が非常に広い

ラトラパンテは、懐中時計の時代から続く発明の歴史と、パテック フィリップからハブロー2までという幅広い価格帯を併せ持つ複雑機構です。仕組みと語源を押さえておけば、時計店のショーケースで見かけたときも、専門用語に戸惑わずに向き合えるようになります。

次にラトラパンテという言葉に出会ったら、ぜひクランプとハートカムの動きを思い浮かべてみてください。複雑機構の入り口として、自分に合う1本を探すなら診断で候補を絞るのも近道です。

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ラトラパンテの仕組みに触れたところで、関連するクロノグラフの話題もあわせて読んでみてください。通常のクロノグラフの実用性や秒針の扱い、そして複雑機構全般への理解を深める記事を集めました。

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この記事を書いた人

時を旅するツールとして、機械式腕時計を中心とした高級ウォッチのめくるめく世界を、マニアックに情熱的に旅していきたいと思います。
ブライトリングのナビタイマー B01クロノグラフ41を所有。欲しい腕時計は、ポラリス・デイトなど。
ぜひ、「クロノジャーニー」で、一緒に高級腕時計の世界を楽しみましょう!

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