憧れの機械式時計、いつかは手に入れたいと思いますよね。でも、ネットで調べると「やめとけ」なんて言葉がたくさん出てきて、不安になっていませんか。高い買い物だけに、買ってから後悔したくないという気持ち、すごくよく分かります。維持費がかかるとか、すぐに壊れるとか、いろいろな噂を聞くと躊躇してしまいますよね。この記事では、なぜそこまで強く反対されるのか、その理由を包み隠さずお話ししますね。いい面も悪い面もしっかり知った上で、あなたにとって最高の一本を選ぶためのヒントになれば嬉しいです。
- 機械式時計の維持費(オーバーホール代)が10年で具体的にいくらかかるのか分かります
- スマホやPCなど現代社会に潜む「時計の天敵」と具体的な故障リスクを知ることができます
- 「資産になる」という噂の真実と、2025年現在の市場価値の現実を理解できます
- それでも機械式時計を持つことの本当の価値と満足感が見つかります
機械式時計はやめとけと言われる最大の理由は、購入価格以上に重くのしかかる「ランニングコスト」と、現代のデジタル環境との相性の悪さにあります。しかし、それら全てのリスクを「愛すべき欠点」として受け入れられた時、機械式時計は単なる道具を超えた、あなたの人生のかけがえのないパートナーになりますよ。
機械式時計はやめとけと言われる5つの理由と維持費の真実

機械式時計を購入するということは、美しい工芸品を手に入れると同時に、手間とコストのかかる契約を結ぶこととほぼ同義です。多くの人が購入前の高揚感で見落としがちな、所有することの「痛み」について、まずは直視する必要があります。「知らなかった」では済まされない、リアルなお金とリスクの話をしていきましょう。
3年から5年ごとのオーバーホール代が家計を圧迫する
機械式時計を持つ上で避けて通れないのが、定期的なメンテナンス費用です。「時計なんて一度買えば終わりでしょ?」と思っていると、後で痛い目を見ることになりますよ。
機械式時計は、数百個の金属パーツが精密に組み合わさって動いています。これらのパーツをスムーズに動かすための潤滑油は、時間が経つとどうしても劣化したり乾いたりしてしまうんです。そのまま使い続けるとパーツ同士が摩耗して、最悪の場合は故障して動かなくなってしまいます。
これを防ぐために必要なのが、オーバーホール(分解掃除)です。一般的には3年から5年に一度の頻度で行う必要がありますが、この費用がばかになりません。
具体的な費用の目安を見てみましょう。ブランドや機能によって大きく異なりますが、決して「小遣いの範囲」で済む金額ではありません。
| 時計の種類・機能 | 民間修理店での相場 | メーカー正規修理の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| シンプルな3針モデル | 25,000円〜40,000円 | 50,000円〜80,000円 | ロレックスのエクスプローラーIなど |
| クロノグラフ(ストップウォッチ付) | 45,000円〜70,000円 | 80,000円〜150,000円 | 部品点数が多く作業工程が複雑なため高額 |
| 特殊機構(トゥールビヨン等) | 要見積もり(対応不可も多い) | 数十万円〜数百万円 | 一般人は手を出してはいけない領域 |
特に人気のクロノグラフモデルや、海外高級ブランドの正規修理に出すと、一回で10万円近く飛んでいくことも珍しくありません。数年ごとにこの出費があるというのは、家計にとって小さくない負担ですよね。機械式時計はやめとけと言われる最大の理由は、このランニングコストの高さにあるんです。
例えば、結婚を機に奮発してクロノグラフの時計を買ったとします。35歳、40歳、45歳…と人生の節目ごとに、毎回10万円近い請求書が届くわけです。子供の教育費や住宅ローンがかさむ時期に、この出費は正直言ってかなり痛いですよね。「時計のために家族旅行を我慢する」なんてことにならないよう、購入前に維持費をシミュレーションしておくことが不可欠です。
(出典:一般社団法人 日本時計協会『時計の取り扱いについて(保守・点検)』)
MOMOMO一生モノとして使うには維持費の積み立てと管理が不可欠
「良い時計は一生モノ」という言葉、よく耳にしますよね。確かに、しっかりと手入れをすれば孫の代まで使えるのが機械式時計の魅力です。でも、それは裏を返せば一生、維持費を払い続ける必要があるということなんです。本体価格を払い終えた後も、まるでサブスクリプションのようにコストが発生し続けることを覚悟しなければなりません。
先ほどお話ししたオーバーホール代だけでなく、長く使っていればバンドの交換や、傷ついた風防(ガラス)の交換、防水パッキンの交換など、細かな修理費用も発生します。また、何十年も使い続けると、メーカーでの部品保有期間が終了してしまい、修理そのものが難しくなるリスクだってあります。
具体的に、30歳で購入して60歳までの30年間、ロレックスのサブマリーナー(ダイバーズウォッチ)を使い続けた場合のトータルコストを試算してみましょう。
- オーバーホール(5年に1回実施): 1回約9万円 × 6回 = 54万円
- リューズやチューブの交換(消耗品): 1回約1万円 × 3回 = 3万円
- 防水パッキン交換や研磨仕上げ: 数万円
なんと、維持費だけで約60万円以上がかかる計算になります。これはミドルクラスの時計がもう一本買えてしまう金額です。「一生モノ」という言葉の裏には、これだけの追加投資が必要であるという事実は、販売店ではあまり強調されません。
さらに怖いのが、メーカーによる部品保有期間の終了です。国産時計などは製造終了から7年〜10年程度で部品の供給を打ち切ることが多く、そうなるとメーカーでの修理は断られてしまいます。ロレックスやパテックフィリップなどの高級ブランドは比較的長く面倒を見てくれますが、それでも古いモデルの修理費は年々高騰しています。
また、維持費はお金だけの問題ではありません。「そろそろオーバーホールの時期かな?」「最近ちょっと進みが早い気がするな」と、常に時計の体調を気にかける精神的なコストも発生します。
賢いオーナーたちは、時計を買った翌月から「時計貯金」を始めています。毎月2,000円〜3,000円を積み立てておけば、5年後のオーバーホール時に慌てずに済みます。このような計画的な資金管理ができる人でないと、機械式時計を「一生モノ」として維持するのは難しいのが現実です。「面倒くさいな」と思ったあなたは、維持費のかからないクォーツ時計や、買い替え前提のスマートウォッチの方が幸せになれるかもしれません。
現代社会には磁気や衝撃など故障の原因が溢れている


実は、機械式時計にとって現代社会は、昔よりも過酷な環境になっているって知っていましたか?特に気をつけたいのが磁気と衝撃です。
機械式時計の心臓部である「ヒゲゼンマイ」というパーツは金属でできているため、強い磁気を浴びると磁化してしまい、精度が狂ったり止まったりしてしまいます。昔はそこまで気にしなくてよかったのですが、今は私たちの身の回りに磁気の発生源がたくさんありますよね。
- スマートフォン、タブレット
- ノートパソコン
- バッグのマグネット留め具
- イヤホン、スピーカー
これらは全て強力な磁気を発しています。例えば、帰宅して腕時計を外し、その横にスマホを置いて寝る。これだけで一発アウト、翌朝には時計が狂っている可能性があります。「JIS 1種耐磁」などの耐磁性能を持つ時計も増えていますが、それでも密着させるレベルの強い磁気には勝てません。
また、衝撃への弱さも深刻です。機械式時計の部品はミクロン単位の精度で組み上げられており、落下などの強い衝撃が加わると、天真(テンプの軸)が折れたり、針が外れたりします。「ゴルフのスイング」「野球のキャッチボール」「拍手をする時の強い振動」でさえ、内部機構にダメージを与える可能性があります。
「スマホは落としても画面が割れる程度で済むし、動作には問題ない」という感覚で機械式時計を扱うと、修理代で数万円〜十数万円が吹き飛びます。満員電車でドア枠にガツンとぶつけた時の、あの「血の気が引くような感覚」は、機械式時計オーナーなら誰もが経験するトラウマです。常に左手首の位置を気にしながら生活する「Wrist Awareness(手首への意識)」が求められる生活は、人によっては大きなストレスになるでしょう。
豆知識:磁気抜きの方法
もし磁気を帯びてしまっても、時計修理店に持ち込めば数千円で「脱磁(磁気抜き)」を行ってくれます。Amazonなどで数千円の「磁気抜き器」を買って自分で直すことも可能ですが、やり方を間違えると悪化することもあるので注意が必要です。



時間のズレやゼンマイを巻く手間がめんどくさい
「時計なんだから、時間は正確で当たり前でしょう?」
もしあなたがそう思っているなら、機械式時計は不良品にしか見えないかもしれません。なぜなら、機械式時計は狂うのが当たり前の道具だからです。
数百万円する最高級の機械式時計であっても、1日に数秒〜10秒程度のズレ(日差)は許容範囲とされています。一般的なモデルなら、1日にプラスマイナス20秒程度のズレは「正常」です。
「たった20秒?」と思うかもしれませんが、これは1週間で2分以上のズレになります。通勤電車ギリギリの時間に行動している時や、分刻みのスケジュールで動くビジネスマンにとって、この「信頼できない2分」は致命的になり得ます。結局、大事な時はスマホの時計を確認することになる、なんていうのは機械式時計あるあるです。
さらに面倒なのが、止まることです。
多くの機械式時計は「自動巻き」といって、腕の動きに合わせてローターが回転し、ゼンマイを巻き上げる仕組みになっています。しかし、パワーリザーブ(稼働時間)は多くのモデルで40時間〜70時間程度です。
つまり、金曜日の夜に時計を外して土日を家でゆっくり過ごすと、月曜日の朝には確実に止まっています。
月曜日の朝、これから出勤という慌ただしい時間にやることは以下の通りです。
- 止まった時計を振って再始動させる
- リューズを回してゼンマイを十分に巻き上げる
- スマホを見て正確な時刻に合わせる
- 日付を合わせる(午前・午後の区別に注意しないと壊れる原因に!)
これを「愛機との対話」「週の始まりの儀式」として楽しめる心の余裕がある人なら良いのですが、多くの人にとっては単なる面倒な作業でしかありません。特に在宅ワークが増えて運動量が減った現代では、平日に着けていても巻き上げ不足で止まってしまうことさえあります。
「時間はスマホを見れば正確」「スマートウォッチなら充電さえすれば止まらない」という利便性を知ってしまった現代人にとって、機械式時計の不便さは想像以上のストレスになる可能性があります。



資産価値を期待しても暴落や買取価格低下のリスクがある


「機械式時計は資産になる」特に「ロレックスは現金だ」といった言葉は、購入のハードルを下げる魔法の言葉として、SNSや一部のメディアで頻繁に聞かれますよね。確かに、2020年から2022年頃にかけては、世界的な金融緩和と投機マネーの流入により、一部の超人気モデル(デイトナやノーチラスなど)の価格が異常な高騰を見せ、実際に購入価格を大きく上回るリセールバリューを記録した時期もありました。しかし、2025年現在、その神話は大きく揺らいでいます。
市場の動向は常に変動しており、ピーク時に比べて中古市場の価格は確実に下降傾向にあります。投機的な需要が落ち着きを見せ、価格が実需に基づいた水準へと回帰している過程にあると見ていいでしょう。特に、ピーク価格で購入してしまった層にとっては、わずか数年で数百万円の含み損を抱えるという厳しい現実が突きつけられています。
資産価値を期待してはいけないブランド
リセールバリューはブランドの「流動性」と「人気」に依存します。ロレックス、パテックフィリップ、オーデマピゲといったトップクラス以外は、購入直後に価値が大きく下がります。特に、フランクミュラーや一部のゼニス、ルイ・ヴィトンなどのファッションブランド系は、数年後の買取価格が定価の50%を切ることも珍しくありません。新品で購入した時点で「損失確定」だと認識しておきましょう。
機械式時計を「投資商品」として見るのは極めてリスキーな行為です。株や債券と違い、時計は身につけることで傷がつき、時間の経過で劣化が進みます。資産として時計を保有し続けるためには、前述したように定期的な高額のオーバーホール費用も必要です。これらの維持コストを考慮すると、本当に資産として増えるモデルはごくごく一握りであり、大多数の機械式時計は高額な趣味の消費財に過ぎないという真実を受け入れるべきでしょう。
本当に損をしたくないなら、この暴落リスクと維持費という「負のコスト」を天秤にかけ、最終的に「資産ではなく、自分の満足のために買う」という結論にたどり着くことが、後悔しないための唯一の道だと言えます。円安によって日本円での価格が一時的に高止まりしているモデルもありますが、グローバルで見れば相場が下落しているのは紛れもない事実ですよ。



安易に購入して後悔する人の典型的なパターン
機械式時計はやめとけという警告は、実は「あなたのような人にこそ買ってほしくない」という経験者からの親切心であることが多いんです。では、具体的にどんな人が後悔のループにハマってしまうのでしょうか。後悔する人の特徴を知ることで、あなたがそのパターンに陥るのを防ぎましょう。
1. 憧れだけで「身の丈に合わない」モデルを選んだ人
最も多い後悔のパターンは、雑誌やSNSで見た派手なモデルや、高額なフラッグシップモデルを無理してローンで買ってしまったケースです。購入直後は満たされるのですが、すぐに以下のストレスに悩まされます。
- 傷への恐怖: 常に時計をぶつけないかビクビクし、結局普段使いできずに宝の持ち腐れになります
- 維持費の支払い: 数年後のオーバーホール代の請求に耐えられず、泣く泣く手放すことになります
2. 実用性(精度・手間)を軽視した人
「数秒のズレなんて気にしない」と思っていたのに、いざ使ってみると、朝の慌ただしい時間に時刻合わせをするのが想像以上に面倒だと感じるパターンです。特に毎日同じ時計を使わず、他の時計とローテーションしている人ほど、止まっている時計にイライラしがちです。
3. 流行や他人の評価で選んだ人
「リセールバリューが良いから」「みんなが持っているから」という理由で、自分の好みではない時計を選んだ場合、高確率で飽きてしまいます。機械式時計の真の魅力である「機械のロマン」を感じられないため、単なる高くて不便なブレスレットになり下がり、すぐにクォーツやスマートウォッチに戻ってしまうでしょう。
後悔しないためには、この時計の維持費(数万円〜十数万円)を、趣味の費用として喜んで払えるか「この時計に傷がついても、それも歴史として愛せるか」という2点を、購入前に自問自答することが大切ですよ。これらの条件を満たせないなら、今はまだ機械式時計を買うタイミングではないのかもしれません。
機械式時計はやめとけという忠告があっても手に入れたい魅力


ここまで、機械式時計が抱えるネガティブな側面、特に経済的・実用的な「不都合な真実」を徹底的に見てきました。それでもなお、世界中の多くの人を惹きつけてやまないのは、理屈や経済合理性を超えた、機械式時計ならではの圧倒的な魅力があるからです。ここからは、その「ロマン」と「満足感」に焦点を当てていきましょう。
クォーツ時計やスマートウォッチの方が寿命とコスパは優秀
機械式時計の魅力を語る上で、避けて通れないのがクォーツ時計やスマートウォッチとの比較です。実用性やコスパという観点では、機械式時計がこれらに勝ることはまずありません。ここを明確に割り切ることが、機械式時計と付き合う上での第一歩ですよ。
クォーツ時計は、水晶振動子(クォーツ)に電圧をかけて発生する正確な振動を利用して時を刻みます。そのため、日差は0.5秒以下という驚異的な精度を誇り、メンテナンスは数年ごとの電池交換(費用数千円)が中心です。例えば、日本の誇るグランドセイコーのクォーツモデルなどは、実用時計として世界最高峰の評価を受けています。
一方、Apple Watchなどのスマートウォッチは、時間を知るだけでなく、通知、決済、健康管理、ナビゲーションまでこなします。現代生活の「道具」としては、これほど完璧なものはありません。
| 比較項目 | 機械式時計 | クォーツ時計 | スマートウォッチ |
|---|---|---|---|
| 実用精度 | 日差±20秒程度 | 月差±15秒以下 | 原子時計並み(NTP同期) |
| 維持費 | 3〜5年で数万円〜10万円 | 数年で電池交換(数千円) | 数年で本体買い替え(高額) |
| 耐久性 | 磁気・衝撃に弱い | 磁気・衝撃に強い | 防水性高いがバッテリー寿命あり |
| 付加価値 | 工芸品、ロマン、歴史 | 高性能、メンテナンスフリー | 生活利便性、健康管理 |
もしあなたが、純粋に「正確で便利な時計」が欲しいのなら、無理に機械式に手を出す必要はありません。機械式時計を選ぶのは、不便さを楽しむという究極の贅沢なんですよね。経済的合理性を捨てて、心の満足を追求できる人だけが、機械式時計の扉を開く資格があるんですよ。
所有するだけで自信に繋がるステータス性と社会的な信用
機械式時計、特に長い歴史を持つブランドの製品は、単なる時間計測の道具ではありません。それは、あなたの時間に対する意識と、経済的な安定を示すステータスシンボルでもあります。
高価な機械式時計は、「一時の流行ではなく、永続的な価値観を理解している」「衝動的な買い物ではなく、計画的な大きな投資ができる経済力がある」というメッセージを間接的に伝えます。ビジネスの場や、特に年配の方を相手にする場面では、さりげなく袖口から見える信頼のブランドの機械式時計は、相手にポジティブな安心感や信用を与えることに繋がるケースがまだ多く残っています。
もちろん、派手で主張の強すぎる時計はかえって下品に見られるリスクもあります。本当に価値あるステータスとは、時計そのものの価格ではなく、その時計を自然体で身につけている人の振る舞いに宿るものです。
- 自己肯定感の向上: 毎日、数十年、数百年と受け継がれてきた機械を腕に巻いているという事実が、あなた自身の自信を後押ししてくれます
- コミュニケーションのきっかけ: 相手が時計好きであれば、そこから話が広がり、思わぬビジネスチャンスや人間関係の発展に繋がることもあります
機械式時計は、あなたに「見栄」を与えてくれるのではなく、自分は間違いない選択をしたという揺るぎない自信を与えてくれるんです。その自信こそが、あなたの社会的な信用を構築する最大の要素になるのかもしれませんね。



美しいムーブメントの鼓動を楽しむ趣味性の高さと満足感
機械式時計の真髄は、そのムーブメント(内部機構)の複雑かつ規則正しい動きにあります。電池も電気も使わずに、小さなゼンマイの力だけで歯車が噛み合い、テンプが一定の振動数で時を刻む様子は、まさに動く芸術品です。
裏蓋がガラスになっているシースルーバックのモデルを選べば、いつでもその美しい動きを眺めることができます。何百ものパーツが一体となって動く様子は、見ているだけで飽きることがありません。
特に、秒針が「チチチチチ」という非常に細かなステップで動く様子(機械式特有の運針)は、クォーツ時計の「カクン、カクン」という動きにはない、生命感のある滑らかさを持っています。この滑らかな運針こそが、機械式時計に魅了される大きな要因の一つですよ。
また、手間がかかるからこそ、愛着が湧くというのも趣味性の高さの証拠です。
- 止まった時計に手巻きで命を吹き込む行為
- 時間合わせをするときの、リューズを回す心地よい感触
- 週末にワインディングマシーンにセットする習慣
これらは全て、デジタルデバイスでは味わえない時計との対話です。コストや手間に目を瞑り、このロマンと趣味性を最優先できる人こそが、真の機械式時計のオーナーになれるんですよ。不便さを楽しむという、究極の大人な趣味性を追求する道具だと言っても過言ではありません。
適切なメンテナンスを行えば一生モノとして子に受け継げる
スマートウォッチやPCが数年で陳腐化し、電子ゴミとなってしまうのに対し、機械式時計が持つ最大の、そして最もロマンティックな価値は、時間を超えて受け継げる永続性にあります。
機械式時計は、物理的な金属部品で構成されています。電子回路のように突然寿命が尽きることはありません。定期的なオーバーホールで摩耗したパーツを交換し、潤滑油を新しく注ぎ続ければ、理論上は100年でも200年でも動き続けることが可能です。
これは、あなたが歩んだ時間、努力した時間、そして人生の節目を共にした時計が、傷や経年変化も含めてあなたの歴史として、次の世代に引き継がれることを意味します。単なるモノではなく、父から子へ、祖父から孫へと、「物語」を伝える家宝になるのです。
スイスの高級ブランド、パテック・フィリップの有名な広告コピーに「あなたは、本当にその時計を所有するわけではありません。次世代に受け継ぐまでの間、それを預かっているにすぎないのです」という言葉があります。これは機械式時計の本質を突いていますよね。
あなたが今、数百万円を投じて手に入れる時計は、未来のあなたの子孫にとってはプライスレスな、掛け替えのない遺産となるかもしれません。その未来への投資とロマンティシズムを享受できることこそ、機械式時計を選ぶ最も大きな理由だと言えます。ただし、そのロマンを実現するためには、前述の通り、途中でメンテナンスを怠らない「覚悟」が絶対に必要ですよ。



高級時計をレンタルして所有欲を満たしてから購入を検討する
デメリットは理解した、ロマンも分かった、でもやっぱり高すぎて決められない、という方もいますよね。そんな慎重派の方に強くおすすめしたいのが、高級時計レンタルサービスの活用です。
数百万円の買い物で失敗するリスクを負う前に、まずは月額制で高級時計を借りて、数ヶ月間「お試し」で生活に取り入れてみましょう。
レンタルのメリット
- リスク回避: 暴落や故障のリスクを負わずに、最新モデルや憧れのブランドを体験できます
- メンテナンスフリー: オーバーホールや修理の費用は運営会社が負担してくれるため、突然の出費の心配がありません
- ライフスタイルへの適合性チェック: 実際に仕事やプライベートで使ってみて、その重さ、厚み、デザインが自分のスタイルに本当に合うのかをじっくり確認できます
- 飽き防止: 様々なブランドやモデルを試すことで、本当に自分が愛せる一本を見極めることができます
特に、機械式時計の不便さが自分にとって許容できるものなのかを試すには最高の機会です。レンタル期間中に「やっぱり時刻合わせが面倒だな」と感じたら、購入は見送ってクォーツ時計を選ぶという賢い判断ができます。逆に「毎日巻くのが楽しい」と感じたら、それはあなたが機械式時計のオーナーになる資格があるということですよ。まずはレンタルでお試し所有欲を満たし、その上で最終決断を下すのが、最も賢い「やめとけ」への対抗策だと言えるでしょう。
まとめ:機械式時計はやめとけという警告と所有する喜びのバランス
ここまで、機械式時計の厳しい現実と、それを上回る魅力についてお話ししてきました。結局のところ、「やめとけ」という言葉に従うべきかどうかは、あなたが手間とコストを愛せるかにかかっています。



- 機械式時計は3〜5年ごとにオーバーホールが必要で10年で20万円以上の維持費がかかる
- スマートフォンやPCの磁気、日常の衝撃で簡単に故障するリスクがある
- 時間のズレやゼンマイを巻く手間は「不便」として受け入れるべき現実
- 「資産になる」のは一部のブランド・モデルのみで投機目的は危険である
- 安易な購入を避け、維持コストとリスクを理解しない人は後悔する典型である
- クォーツやスマートウォッチが実用品としてのコスパと寿命は圧倒的に優秀
- しかし、所有によるステータス性や自己肯定感は機械式時計ならではの魅力
- 美しいムーブメントの鼓動を楽しむ趣味性は代えがたい満足感をもたらす
- 適切なメンテナンスをすれば一生モノとして子孫に受け継ぐロマンがある
- 購入前に高級時計レンタルサービスで「お試し」をすることがリスクヘッジになる
- 機械式時計はやめとけという警告は、経済合理性から見れば正しい判断である
- 最終的な購入の決め手は「手間とコストを愛せるか」というロマンの有無である
今回は、機械式時計はやめとけという警告の真意を、維持費や資産価値、実用性の観点から深く掘り下げて解説しました。経済合理性だけで見れば、この警告は極めて妥当です。高額な維持費の覚悟と現代社会での故障リスクを受け入れられるかどうかが、購入後の満足度を大きく左右することがお分かりいただけたのではないでしょうか。
しかし、デメリットを理解した上で「それでも欲しい」と思えるなら、あなたはきっと機械式時計の真のロマンに魅了されています。その不便さや手間すらも愛せるというなら、ぜひ一生の相棒を見つける喜びを追求してください。
もし、今回の記事で「やっぱり機械式はハードルが高いかも」と感じた方は、維持費がかからず高精度な高級クォーツ時計や、故障リスクを避けられるレンタルサービスに関する記事も参考になるでしょう。
高額な買い物で後悔しないために、次に読むべきは「失敗しない高級時計の賢い選び方」です。あなたのライフスタイルに最適な一本を見つけるための、具体的なチェックリストと人気モデルの比較を紹介しています。









