なぜCode 11.59は買えない？2025年の市場予測と攻略法

かつては店頭で普通に見かけることができ、「いつでも買える時計」の代名詞ですらあったCode 11.59。それが現在では、あのロイヤルオークと同様に入手困難なモデルとなりつつある現状に、戸惑いを隠せない方は多いのではないでしょうか。2019年のセンセーショナルな発表当初とは異なり、現在の市場ではその評価や資産価値が劇的に変化しています。

特に、待望のステンレススティールモデルが登場して以降、正規ブティックでの購入ハードルは極めて高くなっています。中古市場に目を向けると、定価以上のプレミア価格がつくケースが増えていますが、実はゴールドモデルに関しては定価を下回る価格で取引されるなど、モデルによって状況は全く異なります。この記事では、2025年に向けてさらに変化するであろうCode 11.59の在庫状況の背景にある構造的な理由と、ロイヤルオーク購入に向けた「実績作り」の観点からも重要となる攻略法を、どこよりも詳しく解説していきます。

「どうせ買えないなら諦めるしかないのか」と悲観するのはまだ早いです。市場のカラクリを正しく理解すれば、あなたにとって最適な入手ルートが必ず見えてきますよ。

2025年版｜Code 11.59が正規店で買えない5つの理由

なぜこれほどまでにCode 11.59の在庫が枯渇してしまったのか、その背景にある複雑に絡み合った事情を丁寧に紐解いていきます。単なる一過性の人気沸騰だけではなく、ブランド側の緻密な戦略や、生産体制の根本的な変化が大きく関わっているのです。

「失敗作」の汚名返上？評価急上昇の真実

2019年のローンチ当時、Code 11.59が一部の批評家や愛好家から「失敗作」「期待外れ」と厳しく評されたことを覚えている方もいるかもしれません。当時は、非常に複雑なケース構造に対して文字盤のデザインがシンプルすぎるとの声があり、ブティックの店頭には常に在庫が並んでいる状態でした。

しかし、現在の状況は当時とは全く異なります。初期モデルで指摘された文字盤の単調さは、その後のブランドの迅速な対応によって劇的に改善されました。特に、美しいサンバースト仕上げや、深みのあるグラデーション（スモーク）カラーの採用、そして後年導入された、より複雑で精緻なスタンプ加工によるギョーシェ彫りの文字盤は、時計の表情を一変させました。

これらの進化により、この時計最大の特徴である「オクタゴン（八角形）を内包した複雑なラウンドケース構造」と「ダブルカーブサファイアクリスタル」の美しさが、改めて再評価されるようになったのです。写真では伝わりづらい、実機を手に取った時に感じる圧倒的な立体感や光の反射に、多くの時計愛好家が気づき始めました。

かつては「ロイヤルオークの在庫がないから、仕方なく紹介される時計」という位置付けで見られることもありましたが、今では「Code 11.59のデザインが好きだから欲しい」と指名買いする層が確実に増えています。この純粋な製品としての魅力向上による需要の増加が、在庫不足を引き起こしている根本的な要因の一つと言えるでしょう。

ロイヤルオーク購入への「実績作り」需要

Code 11.59が買えない現状を語る上で、最大の要因として絶対に無視できないのが、オーデマ ピゲ特有の「購入実績（ヒストリー）」という壁の存在です。

ご存知の方も多いかと思いますが、現在、正規ブティックで看板モデルであるロイヤルオーク（特に人気のステンレススティールモデル）を、過去に購入履歴のない「一見の客」がいきなり購入することは、ほぼ不可能に近い状況です。ブティック側は、転売目的ではなく、ブランドを心から愛し長く付き合ってくれる顧客を優先するため、販売相手を慎重に選別しています。

そのため、多くのブティックでは、ロイヤルオークを希望する新規顧客に対して、暗黙の了解、あるいは遠回しな提案として、「まずはCode 11.59やロイヤルオーク オフショアなどを購入して、ブランドとの関係性を築くこと」がステップとして示唆されます。これが、いわゆる「実績作り（ヒストリー構築）」です。

この「手段としての巨大な需要」と、「目的としての本来の需要」が合わさることで、本来であればロイヤルオークよりは供給が足りるはずのCode 11.59までが、完全に枯渇してしまっているのです。いわば、Code 11.59はオーデマ ピゲの世界に入るためのロイヤルオークへのゲートキーパー（門番）のような役割を果たしてしまっているのが実情です。

ステンレスモデル投入が招いた在庫枯渇

2023年の市場における最大のトピックは、間違いなくステンレススティール（SS）モデルの本格投入です。これは市場の構造を一変させる出来事でした。

それまでのCode 11.59のラインナップは、ホワイトゴールドやピンクゴールドといった高価な貴金属（金無垢）モデルが中心でした。価格帯も400万円台前後が主流であり、ロイヤルオークのSSモデル（当時300万円前後）と比較しても高額であったため、「デザインは好きだけど、高すぎて手が出ない」と二の足を踏んでいた層が一定数存在しました。

しかし、満を持してステンレスモデルが登場したことで、状況は一変します。価格帯はオーデマ ピゲの中では比較的エントリーしやすい313万5000円〜335万5000円（税込）となりました。さらに、SSモデルは傷を気にせず日常使いしやすいという実用的なメリットもあります。

モデル素材	以前の状況	現在の状況と変化の理由
ゴールド (WG/PG)	比較的手に入りやすく、店頭在庫もあった。	SSモデルの人気に引っ張られる形で注目度が増し、以前より在庫が減少傾向にある。
ステンレス (SS)	ラインナップ自体が存在しなかった。	圧倒的な一番人気となり、発売直後から枯渇。価格的な魅力と実用性で幅広い層が殺到した。

これにより、これまで様子見をしていた層や、新規の若いファン層が一気に市場に参入し、全国のブティックへ問い合わせが殺到しました。その結果、SSモデルは発売直後から店頭で見かけることがほぼない「幻のモデル」となってしまい、その影響がコレクション全体の品薄感に拍車をかけているのです。

銀座や新宿などブティックの予約事情

日本の中心地である東京、特に銀座や新宿に構えるオーデマ ピゲのブティックは、世界的に見ても極めて競争が激しいエリアとして知られています。現在、これらの主要店舗では、混雑緩和と質の高い接客を提供するため、基本的に「完全予約制」（来店予約制）を採用しています。

しかし、ここに多くの人が誤解しやすい大きな落とし穴があります。苦労して来店予約を取り、ようやく店舗に足を踏み入れたとしても、必ずしも「希望の時計の在庫を見せてもらえる」とは限らないのです。

ブティック側も、転売目的の購入者（転売屋）を非常に警戒しており、顧客の選別を厳格に行っています。そのため、以前のようにふらっと店舗に立ち寄って「ショーケースのこれください」と購入することは、物理的に不可能なだけでなく、システム的にも難しくなっています。

SNSなどで見かける「買えない」という嘆きの声の多くは、単にメーカーの在庫がないだけでなく、ブティック側が「売る相手を慎重に選んでいる」という、ブランド側の販売戦略による側面も強いということを理解しておく必要があります。

新キャリバーへの移行による生産調整の影響

2024年から2025年にかけては、オーデマ ピゲというブランドにとって、技術的な大きな転換期でもあります。特に注目すべきは、時計の心臓部であるムーブメント、とりわけ永久カレンダー（パーペチュアルカレンダー）などの複雑機構における大規模な刷新です。

例えば、長年にわたって多くのモデルに搭載され、信頼性の高かった名機「Cal.5134」が生産終了となり、より現代的なスペックを備えた自社製の新世代ムーブメント「Cal.7138」などへの移行が進められています。

一般的に、マニュファクチュール（自社一貫生産体制）の時計メーカーにおいて、こうした基幹ムーブメントの切り替え時期には、生産ラインの大掛かりな調整や、新しい製造工程への習熟期間が必要となります。そのため、一時的に製品の出荷数が減少する傾向があります。

この二つの要因が重なる「端境期（はざかいき）」が現在のタイミングと重なったことで、特にコンプリケーションモデルや一部の話題の新作において、供給の空白期間が生まれてしまいました。これが、ただでさえ高いCode 11.59の入手難易度を、さらに物理的な側面から押し上げている要因の一つと考えられます。

買えないCode 11.59を賢く入手する市場攻略と資産価値

正規店で「買えない」という厳しい現状を踏まえ、視点を変えて、並行輸入店や中古市場を活用した具体的な入手戦略について解説します。実はCode 11.59は、狙うモデルによって「買い」の判断基準が天と地ほど異なります。市場の歪みを理解することが、賢い買い物の第一歩です。

並行輸入店でのSSモデル価格と在庫実態

正規店では完全に入手困難となっている大人気のステンレススティール（SS）モデルですが、中野や銀座などに店舗を構える有力な並行輸入店には、新品や未使用品の在庫が存在することがあります。ただし、その価格は定価通りではありません。いわゆる「プレミアム価格（プレ値）」での販売となっています。

2024年から2025年にかけての市場動向を分析すると、SSモデルの3針タイプ（定価約313万5000円〜335万5000円）が、並行店の実勢価格では360万円〜390万円前後で取引されています。これは定価に対して、およそ15〜20％程度の上乗せ（プレミアム）がついている計算になります。

この＋50万円〜80万円というプレ値をどう捉えるかが判断の分かれ目です。「正規店に何度も通うための交通費や時間、断られ続ける精神的な労力」をコストと考えるならば、この上乗せ分は、ある意味で確実に入手するための「時間を買うための正当な手数料」として妥当だと考える人も多いのです。

実際、店頭に在庫がなくても、海外の独自のネットワークから探してくる「お取寄せ」対応を行っている店舗も多く、日本国内だけでなくグローバル規模で在庫の奪い合いが起きています。

【狙い目】定価割れのゴールドモデル活用術

ここが本記事で最も強くお伝えしたい、市場攻略のポイントです。SSモデルが軒並みプレ値になっている一方で、ホワイトゴールド（WG）やピンクゴールド（PG）の金無垢モデルは、二次流通市場（中古・並行市場）で「定価割れ」を起こしているケースが多々あるのです。

例えば、定価が400万円〜450万円程度する現行のゴールドモデルが、状態の良い中古美品や並行輸入品の新品であれば、350万円〜400万円前後で見つかることが珍しくありません。モデルやタイミングによっては、定価から100万円近く安く買えることさえあります。

もしあなたが、「ロイヤルオークへの実績作り」にそこまで強いこだわりがなく、純粋に「Code 11.59という時計そのもののデザインや質感を楽しみ、長く愛用したい」と考えているのであれば、状態の良い中古のゴールドモデルを狙うのが、最も満足度が高く、経済的にも賢い選択と言えるでしょう。SSモデルをプレ値で買う予算に少し足すだけで、本来格上の存在である金無垢モデルが手に入るのですから。

後悔しないための中古市場とリセール率

高額な時計であるCode 11.59を購入する際、将来手放すときの価値、すなわち「資産価値（リセールバリュー）」を気にする方は多いでしょう。ここでも、SSモデルとゴールドモデルでは状況が大きく異なります。

「新品を定価で買って、売るときに大損する」のを避けたければ、戦略は二つに一つです。競争率の高いSSモデルを正規店で狙うか、あるいは、最初から「減価償却済み」とも言えるお得な中古のゴールドモデルを選ぶか。この市場構造を理解せずにゴールドモデルを定価で買うと、将来売却する際に「後悔」することになりかねません。

スターホイールなど希少モデルの入手難度

Code 11.59のコレクションの中でも、文字盤上をアワーディスクが回転しながら時刻を表示するワンダリングアワー機構を搭載した「スターホイール（Starwheel）」は、完全に別格の存在です。

このモデルに関しては、正規ブティックでの購入は、長年の実績を持つVVIPクラスの顧客に限定されており、一見の客や実績の浅い顧客への案内は皆無に等しいのが現状です。生産数自体が極めて少ないため、ブティックに入荷することすら稀です。

二次流通市場に目を向けても、その希少性は際立っています。定価（約770万円）を大幅に上回る900万円〜1,000万円クラスの超高額なプレミアム価格で取引されています。

もし市場で実物を見かけることがあり、予算が許すのであれば、迷わず確保すべきレベルの希少性を持っています。今後、さらに価値が上がる可能性も秘めた特別なタイムピースです。

正規店での購入確率を上げる振る舞いとは

並行店や中古市場の魅力をお伝えしましたが、それでも「やっぱり正規店で定価購入したい」「ロイヤルオークのために実績を作りたい」という強い意志をお持ちの方のために、プロの視点から少しでも購入確率を上げるための振る舞いについてアドバイスします。

最も重要なのは、販売員（SA）に対して「ロイヤルオークを買うためのついで」という雰囲気を完全に消し去ることです。SAはプロですので、「本命はロイヤルオークで、そのために仕方なくCode 11.59を買おうとしている客」を敏感に見抜きます。

「このお客様なら、Code 11.59の良さを本当に理解してくれて、大切に長く愛用してくれるだろう」とSAに心から思わせることが、バックヤードから貴重な在庫を出してもらうための、遠回りのようで唯一の近道なのです。

並行差別なし？購入後のメンテナンス事情

並行輸入店や中古時計店での購入を検討する際、多くの方が心配するのが、いわゆる「並行差別」の存在です。「正規店以外で買った時計は、メーカーでの修理代が高くなるのではないか？」「メンテナンスを断られるのではないか？」という不安です。

結論から申し上げますと、オーデマ ピゲに関しては、並行差別はほとんどありません。正規ブティックで購入した時計であっても、並行輸入店や中古市場で購入した時計であっても、保証期間、メンテナンス費用、受けられるアフターサービスの内容は基本的に同等です。

この「差別のなさ」は、二次流通市場での購入を後押しする非常に大きな安心材料です。堂々と並行店で自分好みの個体を購入し、その後のメンテナンスだけブティックにお願いするという使い方も、全く問題なく歓迎されます。

まとめ：Code 11.59は買えない？将来性

かつては「いつでも買える時計」だったCode 11.59は、今や「選ばれた人しか買えない時計」へとその姿を大きく変えました。その背景には、ブランドの巧みな戦略、製品自体の進化、そして市場の複雑な需給バランスがありました。

• Code 11.59は初期の低評価から逆転し、純粋な製品需要が急増している
• ロイヤルオーク購入のための「実績作り」目的の需要が在庫を強く圧迫している
• 待望のSSモデル投入が幅広いエントリー層を呼び込み、枯渇を決定づけた
• 都内の主要ブティックは完全予約制であり、一見客の購入は極めて困難
• 2025年は新キャリバーへの移行期にあたり、生産調整による供給減の影響もある
• SSモデルは並行店でプレ値取引されているが、資金があれば即納が可能
• ゴールドモデルは中古市場で定価割れを起こしており、非常にお得な狙い目
• スターホイール等の希少モデルは、市場流通自体が極めて少なく入手困難
• 正規店攻略には、ロイヤルオークのついでではなく「Code 11.59への愛」を語ることが必須
• オーデマ ピゲには並行差別がほとんどないため、中古や並行店での購入もリスクが低い
• 資産価値を重視するなら「SSを正規で狙う」か「金無垢を中古で安く買う」
• 「買えない」と嘆くより、この市場の歪みを理解して利用するのが賢明な戦略
• 自身の目的（実績作りor時計そのもの）に合わせて、最適な購入ルートを使い分けるべき

今回は、Code 11.59がなぜこれほどまでに入手困難となっているのか、その構造的な理由と、現状を打破するための具体的な攻略法について解説しました。正規店での購入が理想ではありますが、市場の状況を冷静に分析すれば、並行輸入店や中古市場にも大きなメリットとチャンスが隠されていることがご理解いただけたかと思います。

Code 11.59について、さらに深く知りたい方は、以下の記事も参考になるでしょう。オーデマ ピゲのリセールバリューや資産価値が気になる方には、関連記事もぜひ合わせてご覧ください。